なわとび競技/スピード種目の練習方法

制限時間内にとんだ回数を競う、とてもシンプルな競技がスピード種目です。おおきく30秒と3分の制限時間があり、全国大会や国際大会でも正式種目として採用されています。

シンプルゆえに実力が出やすく、練習した分だけ記録が伸びるのが特徴です。

この記事では、スピード種目の練習方法やトレーニングについて詳しく解説しています。

スピード種目のルール

スピード種目はシンプルに回数を競う競技ですが、制限時間や人数によって4つの種目があります。また細かいですが回数の数え方や公式音源などもあるので、ここで確認しておきましょう。

スピード種目の種類

スピード種目にはおおきく4種類あります。制限時間やとび方が違います。

おもなスピード種目

  • 30秒スピード
  • 3分スピード
  • 2重跳びスピード
  • 団体戦スピードリレー

※2重とびスピードは団体戦のみ

30秒スピードと3分スピードは個人戦の種目です。2重とびスピードも以前は個人戦の種目だったのですが、今は団体戦の種目のみになりました。

団体戦の場合は「スピードリレー」という種目名になり、2人もしくは4人でとんだ回数の合計を競います。

回数の数え方・違反

スピード種目は原則「かけあしとび」で跳びます。左右の足を交互について跳び、右足が地面についたときのみ回数を数えます。ただし2重とびスピードのみ、両足でとんで着地した回数をすべて数えます。

スピード種目はすべて公式音源に合わせてスタートして終了します。公式音源はなわとび協会のHPなどでも公開されています。

JJRU公式ページ

公式音源の「ピーッ!」という音に合わせて跳び始め、同じく「ピーッ!」という音がなったら跳ぶのをやめます。このとき、スタートの音よりも先に身体やロープが動いてしまうとフライングになります。

またスピードリレーでは「ピーッ」の音で次の選手にリレーしていきます。しかし、リレーするタイミングがずれてしまうと同じく「不正交代」となり減点対象です。

フライングや不正交代は最終回数から10回減点されてしまうので、十分に注意しましょう。

30秒スピードの練習方法

スピード種目の中でいちばん取り組みやすいのが30秒スピードです。公式音源では「スタート音・10・20・終了音」が流れます。

ただ、トップスピードの勝負になるので、1回のミスでも命取りになる緊張感のある種目です。

練習メニューと使う道具

30秒スピードではビーズロープ、ワイヤーロープ、フリースタイルロープの3つを使用します。

最初はフリースタイルロープで練習をしますが、30秒で70回を超えられるようになったらワイヤーロープを使うようにしましょう。

 

 

 

まずは60回を目指そう

30秒スピードの最初の目標は60回です。誰でもここまでは練習すれば十分に到達できる早さなので、最初の目標にぴったりです。

30秒で60回を目指すには、次の3点に注意して練習をしましょう。

60回を目指すためのポイント

  1. 縄の長さ
  2. 足のあげ方
  3. 引っかからない

なにより30秒で引っかからないことが最重要です。スピード種目という名前ではありますが、スピードを出すよりも引っかからないことの方が100倍重要です。引っかかる原因は主に「足のあげ方」と「焦り」です。

60回の早さは思っている以上にゆっくりです。焦らず30秒を跳びきれるようなペースでやってみましょう。また足を後ろに蹴り上げてしまうと、まわっていく縄につま先が接触するのでよくありません。

足はできるだけ上下にコンパクトに動かすようにしましょう。

もしどうしても記録が出ない場合は縄を短くします。縄は2cm短くなるにつれて30秒あたり3回ほど早くなります。

70回を超えればワイヤーロープに変更

30秒スピードの70回を超えるには、きちんと練習しないと難しい領域です。全国大会に出場する気持ちがある人は、ぜひこのタイミングでワイヤーロープに変更しましょう。

70回を目指すのに必要なのは以下の3点です。

70回を目指すためのポイント

  1. 縄の長さ
  2. リズム
  3. フォーム(縄の設置場所)

いよいよトレーニングっぽい内容が入ってきました。縄の長さは2cm短くなると10秒あたり1回ずつ早くなるので、少しずつ短く調整していきましょう。

70回を目指すには、どのぐらいのペースとリズムで跳んだら良いかを身体で覚える必要があります。目安として「70÷3+2=約25回」を10秒で目指しましょう。

10秒で25回だと70回には少し早いですが、スタートの初速や後半のペースダウンを考えるとこのぐらいの早さはほしいところです。

またフォームの意識として、地面のどこに縄が接地しているかを確認しながら跳んでください。接地のときにロープが跳ね上がったり、反対に空中に浮かんでいたりすると失敗の原因です。

ほどよくロープが地面にぶつかり、地面から跳ねすぎない位置を探しながらフォームを調整していきましょう。

80回はフォーム固めが肝心

30秒スピードで80回を超えたら上級者の仲間入りです。ここまで来るには正しいフォームや縄の長さ、ペース・リズム感覚が必要になります。

80回まではどれだけ正しい姿勢とペースで跳ぶかが重要でしたが、80回以降はいかにしてトップスピードをあげてミスをしないようにするか?が重要になってきます。

80回を目指すためのポイント

  1. インターバルトレーニング
  2. シャドー
  3. 10秒MAX

インターバルトレーニングとは、一定の間隔で「とぶ」「休む」を繰り返す練習のことです。陸上競技などでも用いられているトレーニング方法です。30秒スピードの場合は60秒のインターバル、30秒ずつのインターバルなどが効果的です。

ほかにも80回のペースを掴むためにメトロノームや曲のテンポを使った「シャドー」という練習があります。縄を使わずに足踏みだけでペースとリズムをとる練習で、身体にペースを染み込ませる効果があります。

そして最高速度を上げるために、10秒間だけ本気で跳ぶ10MAXもこの辺から取り入れていきましょう。10秒で29回~30回を跳べるようになれば、80回が見えてきます。

90回はリズムの安定と練習量

30秒スピードで90回を超えてきたら、全国大会でも上位に入賞できるレベルです。ジュニアや小学生の部門でも、トップレベルの選手しか90回を超えられません。

90回を超えるにはリズムが一番大切です。いかに速いテンポで回してもリズムを失わずに跳び続けられるか?で大きく記録が変化します。

そして、90回を超えるためには少なからず練習量をこなす必要があります。インターバルトレーニングや量的トレーニング、さらにトップスピードを上げる10秒マックスなどを組み合わせて、地道に記録を上げていく必要があります。

おもな練習として、以下のようなものに取り組みましょう。

80回を目指すためのポイント

  • 10秒MAX
  • 30秒インターバル
  • 1分インターバル(休憩1分)
  • シャドー
  • 曲やメトロノームのペース合わせで跳ぶ

90回には10秒で最低でも32回以上は跳ぶ必要があります。できれば35回くらいを目指せると、一気に可能性が高くなります。

また20秒以降でまわすリズムが崩れるの失敗の原因として一番多くなります。後半で体力がシンドイタイミングであっても、フォームやリズムを崩さないような練習が必要です。

曲やメトロノームのペースに合わせて跳び切る練習がオススメで、80~85回のペースで跳びきれるような練習を重ねましょう。

後半ほどキツイですが、しっかり縄を回せるように頑張ってください。

3分スピードの練習方法

スピード種目の中でもっとも嫌がられるのが3分スピードです。公式音源では「スタート音・15・30・45・1分・15・30・45・2分・15・30・45・終了音」が流れます。

長時間のため体力はシンドイですが、きちんと練習すれば記録がでやすく、しかも30秒スピードに比べて安定しやすいのが特徴です。

練習メニューと使う道具

30秒スピードではビーズロープ、ワイヤーロープ、フリースタイルロープの3つを使用します。

最初はフリースタイルロープで練習をしますが、3分で300回を超えられるようになったらワイヤーロープを使うようにしましょう。

 

 

 

 

まずは300回を目指そう

3分スピードは体力勝負と思われがちですが、少し違います。3分をとぶのや嫌だなぁ…という心との勝負が最初です。おっくうな練習を乗り越えて、ある程度回数を重ねれば300回はすぐに見えてくるでしょう。

300回は途中で失敗なく跳びきれなくてもOKでして、1分で1回ずつぐらいのミスは許容範囲です。また1分(60秒)あたりで100回を跳ぶイメージでペース配分ができると、よりやりやすくなります。

ちなみに、300回を超えるまではワイヤーロープは必要ありません。むしろ後半で疲れてくるとフォームが崩れ、失敗が増えてしまいます。時間が長い分、30秒よりもフォームを固めるのが難しいので、最初はフリースタイルロープ(ビニール製)を使うようにしましょう。

360回まではペースづくり練習

300回を超えたらワイヤーロープを使って練習をはじめます。またビーズロープで長時間跳ぶトレーニングも始めましょう。

360回を目指すには30秒あたりで60回を跳ぶ必要があります。このペースをできるだけ崩さずに跳ぶのが360回を超えるコツです。

どうしても前半はペースを早くして、後半は落ち気味になってしまいます。ただ可能な限り後半でペースを落とさないように意識をしましょう。

またワイヤーロープを使い始めるとフォームが崩れてミスが目立ちやすくなります。体力的にしんどい後半では特に失敗しやすいので、縄が地面に当たる部分を確認しながら跳ぶようにしてください。

360回を目指すためのポイント

  1. ビーズロープで長時間とぶ(3分~5分)
  2. 30秒で60回のペースを数えながら刻む
  3. ワイヤーロープを使っても良いが、ミスに注意

400回はフォーム固めが肝心

400回を超えられるようになったら上級者です。ただ、全国大会だと小学生でも上位選手は400回を超えてきます。

400回を超えるにはフォームを固めてミスを減らすことが重要です。1分30秒~2分30秒の間が一番失敗の起こりやすいタイミングなのですが、これは中盤で集中力が途絶えた瞬間に引っかかるからです。

3分をぶっ通しで集中し続けるのはかなり厳しいものがあります。そのためフォームをしっかり固めて、少しぐらい集中力が揺らいでもミスを起きないレベルまで引き上げる必要があります。

400回は30秒あたりで68回ほど跳ぶ必要があります。このペースはちびまる子ちゃんの「おどるポンポコリン」がぴったりなので、この曲に合わせて練習するのがオススメです。

400回を目指すためのポイント

  1. ビーズロープでゆっくり長時間とぶ(3分以上)
  2. ビーズロープで3分をとび切る
  3. 400回のテンポの曲に合わせて跳ぶ

420回はペース配分とリズム

400回を超えてくると、一気に420回まで記録を引き上げることができます。練習の方法は400回のときと同じイメージですが、ペース配分を意識して変化させてみましょう。

ここまでは3分をできるだけ同じペースでとび切る練習をしてきました。しかし、400回を超えたら自分に合ったペース配分を調整して行くと良いです。

同じペースでとび切る

70 – 70 – 70 – 70 – 70 – 70 420回

ペースを変化させる

75 – 70 – 67 – 68 – 67 – 73 420回

この例だと、スタートの1分は少しだけペースを上げ気味にして1分30秒~2分30秒まではやや落とし気味にします。そしてラストの30秒で巻き返して420回です。

あくまで一つの例ではありますが、同じペースでとび切るだけがペース配分でありません。あなたが一番失敗しにくく、記録が出やすい配分を考えるようにしましょう。

フォームの作り方

フォームを作り固めるのには時間がかかりますが、正しいフォームでまわせるようになればミスが減り記録が一気に向上します。

また無理な姿勢でフォームが固まってしまうと、腰痛や首の怪我の原因にもなるので注意しましょう。図で正しいフォームの作り方を解説しているので参考にしてください。

フォームのお手本(横から)

フォームのお手本(正面から)

リズム・ペーストレーニング

リズムペーストレーニングとは、一定のペースを崩さずにとび続けることに加え、後半でリズムが崩れるミスを防ぐための練習です。

とくに30秒スピードではリズム、3分スピードはペース練習が大切になります。リズムペーストレーニングには以下のようなメニューがあります。

リズム・ペーストレーニング
  • メトロノームシャドー
  • 曲合わせシャドー
  • 曲合わせ10秒MAX(10秒~30秒)
  • 曲合わせ3分スピード

ペースやリズムの基準としてオススメなのが、スマホのメトロノームアプリです。無料で入れられるアプリもあるので、ぜひ1つ入れておきましょう。

同じく曲のテンポに合わせて跳ぶのも良いです。メトロノームアプリで曲のBPMを確認して、目標になる回数に近い曲を探してみましょう。

BPMとは?

1分間で何拍あるか?を表す数値で、早いテンポほど数字が大きくなる。

10秒MAX

10秒MAXは最高速度を上げるための練習です。何度も反復して、練習することでスピードのベースアップをすることが出来ます。

回数の目標は(目標回数 ÷ 3 + 2)です。

たとえば90回を目指している場合は32回、80回を目指している場合は29回になります。スタートダッシュの練習にもなるので、ぜひ継続的に練習メニューに取り入れていきましょう。

シャドートレーニング

シャドーとは縄跳びを使わずに足踏みだけをする練習のことです。こちらはペース練習に効果があります。

縄を回す練習はいくつもありますが、足のリズムを練習するトレーニングはこのシャドートレーニングしかありません。スピード種目では縄と足のリズムが一致しないと引っかかってしまうので、10秒MAXと同じく定期的に練習をしておきましょう。

設定するペースは(30秒スピード目標回数 + 5~10回)です。

量的トレーニング

量的トレーニングとは、あまり疲れないけど量をこなす練習のことです。息が上がるほどは疲れませんが、長い時間を跳ぶので集中力や体力が必要です。

量的トレーニングはアスリートの期分けでいうと「トレーニング期」に行うのが良いとされ、怪我を防ぎながらフォームや体力を向上させる効果があります。

トレーニング期とは

大会本番の日から逆算して時期を区分したとき、試合6ヶ月前~3ヶ月前のこと。

ビーズロープトレーニング

量的トレーニングで一番オススメがビーズロープのトレーニングです。

ビーズロープをワイヤーロープと同じか、少し長い状態で準備して長い時間を跳びます。最初は1分程度からはじめて、徐々に2分、3分と伸ばしていきましょう。

早く跳ぶ必要はありませんので、じっくり跳んでください。ただし足の動かし方やフォームは少しだけ意識しましょう。適当に長時間やってもあまり意味がありません。

強度的トレーニング

強度的トレーニングとは、短い時間で一気に息が切れるほと激しいトレーニングのことです。体力的にもキツく、身体への負荷も高くなります。

そのため強度的トレーニングは長期間で続けると怪我の原因になるので注意しましょう。行うのは試合期直前の3ヶ月のみです。

試合期とは

大会本番から逆算して3ヶ月前~本番当日までの期間のこと。強度的トレーニングと同時に体を休め、ピークに体調と技術を調整する時期。

インターバルトレーニング

インターバル(休息)を短いスパンで挟みながら、反復する練習のことです。スピード種目の練習ではおもに30秒、1分などのインターバルトレーニングを行います。

いずれも少し早いペースで跳ぶことで、呼吸が落ち着く前に断続的に負荷を与え、体力向上と集中力アップの効果があります。

インターバルトレーニングの例
  • 30秒スピード/インターバル(30秒)
  • 30秒スピード/インターバル(10秒)
  • 1分スピードでは/インターバル(60秒)